2010年9月14日火曜日

遅読・乱読記 Vol.1 ~ 資本主義の未来 1/2

本を読むのは非常遅く決して得意な方ではないが、大好きである。(もしかしたら読むよりも集める[=積読]方が好きだったりもする?)

留学期間中も時間をとって興味のままにたくさん本を読みたいと思っているが、今回は留学前に読んだ本の中で、とくに印象に残っているものの感想を記すことにする。

貧困のない世界を創る~ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義 (ムハマド・ユヌス著)
貧困のない世界を創る
この本は、開発途上国に足を運んだことも無い2年前にMBA ApplicationのCareer Goal Essayのネタ探し?の一環で購入し、始めは表面的になぞることしかできなかったが、ウガンダでの青年海外協力隊の活動期間中やその後のBangladeshでのMicrofinanceのStudy Tour参加中、ユーラシア大陸のバックパック旅行中に何度か読返す度に理解が深まり、今の自分の活動の方向性に大きな影響を与えている一冊である。

この本ではMicrofinanceで大きな成功をおさめたユヌス氏が、その理念を拡張した、利益最大化ではなく特定の社会目標を追求する・かつ慈善活動ではない新しいビジネスの形"ソーシャル・ビジネス"を提唱している。

平易な言葉で書かれておりわかりやすく、特に、
  • ユヌス氏の現代社会に対する飾りのない率直な見解
    • グローバリゼーション・資本主義は賛成だが弱者が利益を享受できるように構造を変える必要がある
    • 政府・NPO・開発機関・企業のCSRの活動には問題・限界があり、資金・グローバルネットワーク・知財・人材の面でビジネスセクターがSocial Impactの大きな可能性を持っている
    • 既存の資本主義は人間が"最大限に利益を追求する"一次元的な行動モデルで設計されており人間本来の多次元性(人のために役立ちたい、生活・仕事を楽しみたい)が無視されている、など
  • ユヌス氏の提唱する"ソーシャル・ビジネス"の定義
    • 経営の利益を株主に還元するのではなく、継続的に社会問題の解決のために利用する"ソーシャル・ビジネス"の形を解説
    • "社会的企業 (Social Enterprise)"よりももっと具体的な狭い概念として定義している
  • グラミン銀行でのMicrofinanceの成功とソーシャル・ビジネスへの発展への経緯
  • ソーシャル・ビジネスStart Upの1事例(グラミン・ダノン
    • Start Upにあたっての様々な課題と、そこに携わるProfessionalが生き生きと活動している様子が描かれている
が非常に興味深い。

2年前の発刊以来、日本でも今年ユニクロがグラミンとの提携を発表(ややキャッチーすぎる?)したり、ユヌス氏も新しい著作("Building Social Business")を発刊したり着々と動きが出ており、今後も"ソーシャル・ビジネス"はウォッチしていきたい。

ゲイツとバフェット 新しい資本主義を語る (マイケル・キンズレー著)
ゲイツとバフェット 新しい資本主義を語る
この本では、世界の二大富豪であるビル・ゲイツとウォーレン・バフェット、そして政界・財界・学界の巨頭達により、ゲイツの2008年のダボス会議(世界経済フォーラム)でのスピーチで提唱した、"創造資本主義 (Creative Capitalism)"についての議論が喧々諤々と繰り広げられていて、非常に面白い。

ゲイツの提唱する創造的資本主義はつまるところ(私の理解している限りでは)以下の通りである。
  • 現状分析(ユヌス氏の見解に非常に近い)
    • 資本主義により世界はよくなりつつあるが、環境問題・貧困格差等まだまだ課題が山積みである
    • 既存の自由資本主義システムには不備がある
      • 貧しい人に働きかけるインセンティブがなく、ボトム10億人が進歩から取り残されている
      • "自分の利益を追い求める"だけではなく、人間に備わっているもう一つの本質的な"他人を思いやる力"がうまく機能していない

  • 提案:創造的資本主義(Creative Capitalism)
    • 従来の資本主義を修正すれば、収益もあげつつ貧しい人の生活を改善することができる
    • 具体的には・・・
      • 利益に加えて"評価"という市場インセンティブを導入し、"利益を追い求める"力と"他人を思いやる力"をうまく融合する
      • 政府・企業・非営利団体協業を促進する
      • ・・・
    • 具体的な形としては・・・
      • 発展途上国向けビジネス開拓(BOP Busienss: Bottom/Base of the Pyramid Business)
      • 発展途上国のビジネス支援(Fair Trade等)
      • チャリティー商品(REDプロジェクトボルビック 1ℓfor 10ℓなど)
      • プロボノ
      • ・・・
率直な感想としては、ビジネス界のトップのビル・ゲイツがこんなことを考えているのか!と感動し、方向性としては深く共感する一方で、本人も指摘しているように、まだまだ具体的な定義や形が明確ではない(いろんなSocial Impactの概念のごった煮に見える)なといったところだ。

そして、後半の討論部ではゲイツの提案が方向性としてはある程度賛同を得つつも、ズタズタに批評されており、ダイナミックに議論されていて面白い。

いくつか印象深い意見としては、
  • 方向性は同感するが、"評価"のしくみ等、曖昧な点が多々ある
  • 途上国の問題は途上国政府の機能不全が根本原因であり、まずそれを解消せよ
  • 企業の"善行"を促進する前に、まず"悪行"を減らせ
  • "創造的資本主義"というが、既存の資本主義が"創造的"でないとでもいうのか?
  • 企業の社会的責任は利潤の最大化・競争の中での生き残りであり、経営者に株主利益を損じて社会貢献活動を推進する権利はない
  • 社会問題には善悪の白黒つけにくいものがある(例:原子力発電はCO2排出量が少ないから環境にやさしいor Not)ので、経営者の一存で決めるのは問題がある。この手の判断は民主的なプロセスを踏むべきで、企業からは税金を徴収して、金の使い道は民主化された政府に任せるべき
  • なぜ先進国の企業が地元の社会問題ではなく、途上国の貧しい人の社会問題を優先して解決しなければならないのか?など
先日ちょうど学校でもCase Studyで"企業の社会的責任とはなにか?"についてDiscussionがあり非常に盛り上がった。今後MBAの内外での活動を通じてビジネス・経済・政治・社会問題の知見を広げながら、より深く考察していきたいと思う。

まだいくつか感想を記したい本があるのだが、長くなってしまったので一旦投稿を区切ることにする。

Twitter・Blog・その他 使い分け

Blogを開始した割には記事がまったくUpされないじゃないか?とのことであるが、基本的にTwitter・Blog・その他を以下のように使い分けていこうと思ってます。

Twitter(このBlogの右→にも表示)
 日々の出来事・感じたことをほぼリアルタイムにそのままUp
Blog
 日々の出来事の中で重要なものをある程度整理して記事化

ということで、毎日の更新はTwitterが中心になってしまうかもしれませんが、活動が軌道に載って中身が出てきたらどんどんBlogも更新していきたいと思ってます。

その他、Networking・英語での情報発信はfacebookLinkedInもそろそろStart?)、趣味の写真はPicasa(必要が出てきたらFlickrも?)等々を利用。

個人の情報発信・Networkingツールがどんどん充実している今日この頃ですね。

2010年8月26日木曜日

ブログのテーマ・目的

"よりよい社会を築くビジネスの未来を探る旅"

少々壮大なタイトルをつけてしまったが、これが2年間の留学期間中に取り組みたいテーマである。

Key Wordでいえば
  • CSR(Corporate Social Responsibility)
  • Social Enterprise/Business
  • Social Entrepreneurship
  • Social Venture Capital/SRI(Socially Responsible Investment)
  • BOP(Bottom/Base of the Pyramid) Business
  • Sustainable/Green Business
などなど、まだまだ確固たる形が見えていない分野であるが、要するに、"ビジネスをより積極的に社会に役立つように仕組みを変えて行く"大きな流れで、MBA Application Essay用にさもGoalが定まっているように書いた狭いエリアではなく、この大きな流れをまずは俯瞰的に理解し、そして2年後にはどこかに的を絞って何らかの仕事に携わりたいと思っている。

ただ、社会問題といってもGlobalでは環境・資源・エネルギー・食料・貧困、日本でいえば少子高齢化・長期不況・食糧自給・福祉・教育などなど切りがないが、ここ数年の体験から、①発展途上国の貧困問題②日本の社会問題全般、の二つに非常に高い関心がある。

しかし、この手の分野に決して強いわけではないLondon Business Schoolでどこまで実のある活動ができるか、今のところ甚だ自信がない。ただ、今のところ学校での数少ない(涙)関連のある授業に加えて、
で活路を見出して行きたいと思っている。

このBlogは基本的には個人の思考・体験の整理のためのものですが、
  • よりよい社会を築くビジネスの未来
    に加えて、
  • London Business Schoolについて
  • Global化する世界
  • これからの日本
  • 世界と日本の文化
  • London/UK Life
  • 読書録
  • 趣味(カメラ・自転車・料理)
といった自分の関心があるテーマを中心に投稿し、

①日ごろ親しくしている皆様への近況報告
②同じ分野に関心を持つ方々とのNetworking


の場としたいと思っています。

さて、どんなBlogになるでしょうか。。。

2010年8月23日月曜日

今日から新たなスタート@London 2010/08/23

今日から新たなスタートである。場所はイギリスのロンドン。London Business School(LBS)のMBA Programに2年間お世話になる。

2004年の夏に、"MBA留学してキャリアも人生も大きく変えよう"と一大決心をして準備を開始して以来、はや6年の月日が経つ。たった2年の留学のために6年。同じ頃に準備を始めた仲間の多くは既に卒業して次のStepで活躍している。ただ、この間、世の中にも自分にもいろいろなことがあった。

ビジネスを取り巻く環境は徐々に、そして2008年の金融危機きっかけにずいぶん違うものになった。MBAという存在も陳腐で時代遅れ、もしくは世の中の課題に応える場となっているか?と時代錯誤的な感じすらする今日この頃である。

自分といえば、仕事の経験をさらに積もうとコンサルティングに職種を変更したり、異文化経験を広げようとアフリカで青年海外協力隊に参加したり、結婚してユーラシア大陸をバックパック旅行したり、と留学準備と並行していろいろな経験をして、仕事や人生に対する価値観も少しづつ変わってきた。

そんな6年の間も変わらず強烈にイメージを描き続けてきた留学の場は、良くも悪くも世界の政治・経済の中心的存在であるアメリカ、そしてBonston・San Francisco。学校はおろか国さえ違う状況に、最終的に手元に残った実はあまりよく知らないこの選択肢を取るかどうか、渡航する最後の最後まで迷った。
  • 自分の今の課題意識に対してBusiness Schoolが本当適切な場所なのだろうか?(実は公共政策や開発系の大学院では???)
  • 1年ではなく2年間もの時間と莫大な資金の投資に見合う経験ができるだろうか?
  • LBSはなんだかんだ言って"金融スクール"で自分のFocusしたいテーマ(CSR, Responsible Business, Social Entrepreneurship,etc)がどこまで深堀できるだろうか?
  • British訛り(?)の英語を身につけけたくないんだけど・・・
  • 正直イギリスってあまり興味ないし、食事もまずそうで物価も高いし生活を楽しめるだろうか?
などなど不安要素を挙げれば限りがない。

が、止まっているわけにもいかず、先に進んでみることにした。

一筋の希望を見出している点は、
  • 良くも悪くもビジネスの社会に対する存在感・重要性はますます大きくなっていて、ビジネスのしくみをしっかり学ぶにはLBSは十二分な環境である
  • LBSは世界60ヶ国から400人もの優秀な学生が集まってくる非常に国際色豊かな学校で、Globalな環境にどっぷり身を浸すにはこれ以上の環境はない
  • LBSから世界各国のMBAに交換留学でき、自分のFocusしたい分野を補完できる
  • 公共政策・開発分野に世界的に強いLSE、社会起業に強いOxford MBA、その他イギリスの開発系の大学に"物理的"に近く、努力次第でNetworkingのチャンスがいくらでもある
  • 成熟したイギリス社会から社会起業・環境・福祉・文化保護・スローライフなどたくさん学ぶものがある
  • Londonは非常に国際色豊かなコスモポリタンで幅広い活動機会に困らない
  • Londonはヨーロッパ・アフリカ各国へのアクセスがよく、訪問するチャンスがたくさんある
  • アメリカからではなくヨーロッパから世界を眺めてみるのもいい機会かも?
などなど。

少々湿っぽいスタートに見えてしまったが、兎にも角にも全ては自分次第。学校の授業を漫然と受けていても目標の方向に進めるべくもないので、自ら積極的に機会を探して道を切り開いていこうと思っている。もちろん生活を楽しむことも忘れずに。。

さてどんな2年間にできるか?これから始まる!