留学期間中も時間をとって興味のままにたくさん本を読みたいと思っているが、今回は留学前に読んだ本の中で、とくに印象に残っているものの感想を記すことにする。
①貧困のない世界を創る~ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義 (ムハマド・ユヌス著)

この本は、開発途上国に足を運んだことも無い2年前にMBA ApplicationのCareer Goal Essayのネタ探し?の一環で購入し、始めは表面的になぞることしかできなかったが、ウガンダでの青年海外協力隊の活動期間中やその後のBangladeshでのMicrofinanceのStudy Tour参加中、ユーラシア大陸のバックパック旅行中に何度か読返す度に理解が深まり、今の自分の活動の方向性に大きな影響を与えている一冊である。
この本ではMicrofinanceで大きな成功をおさめたユヌス氏が、その理念を拡張した、利益最大化ではなく特定の社会目標を追求する・かつ慈善活動ではない新しいビジネスの形"ソーシャル・ビジネス"を提唱している。
平易な言葉で書かれておりわかりやすく、特に、
- ユヌス氏の現代社会に対する飾りのない率直な見解
- グローバリゼーション・資本主義は賛成だが弱者が利益を享受できるように構造を変える必要がある
- 政府・NPO・開発機関・企業のCSRの活動には問題・限界があり、資金・グローバルネットワーク・知財・人材の面でビジネスセクターがSocial Impactの大きな可能性を持っている
- 既存の資本主義は人間が"最大限に利益を追求する"一次元的な行動モデルで設計されており人間本来の多次元性(人のために役立ちたい、生活・仕事を楽しみたい)が無視されている、など
- グローバリゼーション・資本主義は賛成だが弱者が利益を享受できるように構造を変える必要がある
- ユヌス氏の提唱する"ソーシャル・ビジネス"の定義
- 経営の利益を株主に還元するのではなく、継続的に社会問題の解決のために利用する"ソーシャル・ビジネス"の形を解説
- "社会的企業 (Social Enterprise)"よりももっと具体的な狭い概念として定義している
- 経営の利益を株主に還元するのではなく、継続的に社会問題の解決のために利用する"ソーシャル・ビジネス"の形を解説
- グラミン銀行でのMicrofinanceの成功とソーシャル・ビジネスへの発展への経緯
- ソーシャル・ビジネスStart Upの1事例(グラミン・ダノン)
- Start Upにあたっての様々な課題と、そこに携わるProfessionalが生き生きと活動している様子が描かれている
2年前の発刊以来、日本でも今年ユニクロがグラミンとの提携を発表(ややキャッチーすぎる?)したり、ユヌス氏も新しい著作("Building Social Business")を発刊したり着々と動きが出ており、今後も"ソーシャル・ビジネス"はウォッチしていきたい。
②ゲイツとバフェット 新しい資本主義を語る (マイケル・キンズレー著)

この本では、世界の二大富豪であるビル・ゲイツとウォーレン・バフェット、そして政界・財界・学界の巨頭達により、ゲイツの2008年のダボス会議(世界経済フォーラム)でのスピーチで提唱した、"創造資本主義 (Creative Capitalism)"についての議論が喧々諤々と繰り広げられていて、非常に面白い。
ゲイツの提唱する創造的資本主義はつまるところ(私の理解している限りでは)以下の通りである。
- 現状分析(ユヌス氏の見解に非常に近い)
- 資本主義により世界はよくなりつつあるが、環境問題・貧困格差等まだまだ課題が山積みである
- 既存の自由資本主義システムには不備がある
- 貧しい人に働きかけるインセンティブがなく、ボトム10億人が進歩から取り残されている
- "自分の利益を追い求める"だけではなく、人間に備わっているもう一つの本質的な"他人を思いやる力"がうまく機能していない
- 貧しい人に働きかけるインセンティブがなく、ボトム10億人が進歩から取り残されている
- 資本主義により世界はよくなりつつあるが、環境問題・貧困格差等まだまだ課題が山積みである
- 提案:創造的資本主義(Creative Capitalism)
- 従来の資本主義を修正すれば、収益もあげつつ貧しい人の生活を改善することができる
- 具体的には・・・
- 利益に加えて"評価"という市場インセンティブを導入し、"利益を追い求める"力と"他人を思いやる力"をうまく融合する
- 政府・企業・非営利団体協業を促進する
- ・・・
- 利益に加えて"評価"という市場インセンティブを導入し、"利益を追い求める"力と"他人を思いやる力"をうまく融合する
- 具体的な形としては・・・
- 発展途上国向けビジネス開拓(BOP Busienss: Bottom/Base of the Pyramid Business)
- 発展途上国のビジネス支援(Fair Trade等)
- チャリティー商品(REDプロジェクト、ボルビック 1ℓfor 10ℓなど)
- プロボノ
- ・・・
- 発展途上国向けビジネス開拓(BOP Busienss: Bottom/Base of the Pyramid Business)
そして、後半の討論部ではゲイツの提案が方向性としてはある程度賛同を得つつも、ズタズタに批評されており、ダイナミックに議論されていて面白い。
いくつか印象深い意見としては、
- 方向性は同感するが、"評価"のしくみ等、曖昧な点が多々ある
- 途上国の問題は途上国政府の機能不全が根本原因であり、まずそれを解消せよ
- 企業の"善行"を促進する前に、まず"悪行"を減らせ
- "創造的資本主義"というが、既存の資本主義が"創造的"でないとでもいうのか?
- 企業の社会的責任は利潤の最大化・競争の中での生き残りであり、経営者に株主利益を損じて社会貢献活動を推進する権利はない
- 社会問題には善悪の白黒つけにくいものがある(例:原子力発電はCO2排出量が少ないから環境にやさしいor Not)ので、経営者の一存で決めるのは問題がある。この手の判断は民主的なプロセスを踏むべきで、企業からは税金を徴収して、金の使い道は民主化された政府に任せるべき
- なぜ先進国の企業が地元の社会問題ではなく、途上国の貧しい人の社会問題を優先して解決しなければならないのか?など
まだいくつか感想を記したい本があるのだが、長くなってしまったので一旦投稿を区切ることにする。